「高気密住宅ではストーブやヒーターは使えない」
こんな話を聞いたことはありませんか?

新築やリフォームをした人と話をしていると、「高気密住宅では石油ストーブがダメって言われた」とか「ヒーター使うと家が傷むって本当?」なんて質問をよく耳にします。

結構、ダメだということは聞いているけど『どうしてダメ』かは理解してない人が多いんですよね。

今回は、高気密住宅でストーブやヒーターがなぜ使っちゃいけないのか、その理由を深堀りしていきます。

高気密住宅でストーブやヒーターがダメな理由は“湿気”

まず大きな要因のひとつが 湿気 です。

石油ストーブやファンヒーターは、灯油を燃焼させて部屋を暖めます。
暖かい空気を出すだけなら問題ないのですが、燃焼の過程で「水分」も一緒に発生してしまうんです。

実際は使用条件で変わりますが、わかりやすく説明すると、灯油を1リットル燃焼させると、ほぼ同じ量の 水分(約1リットル) が空気中に放出されるなんて表現がよくされています。

つまり、ストーブを使えば使うほど、部屋の中の湿度がどんどん上がっていくのです。

高気密故に湿気の逃げ場がない

高気密住宅はその名の通り「隙間が少ない家」。
外気の出入りを極力減らして、冷暖房効率を高める構造になっています。

しかしその分、湿気の逃げ道も少ないのが特徴です。

もちろん、建築基準法で定められた24時間換気システムによって、1日に1回は家全体の空気が入れ替わるよう設計されています。
ただ、これはどちらかというと「ホルムアルデヒドなどの有害物質対策」が主な目的であり、湿気を効率よく排出する機能としてはあまり期待できません。

断熱材をしっかり入れて、二重サッシで窓の結露も防いでいるのに、ストーブのせいで結露が発生してしまったら本末転倒ですよね。

湿気が家に与えるダメージとは?

では、湿気が何に悪影響を与えるのか、具体的に見てみましょう。

● 壁の中で結露が起きる

壁内に湿気が入り込むと、断熱材が湿って性能が低下します。さらにカビの発生源にもなります。

● 木材の劣化

構造体の木材が湿気を吸うと、強度が落ちます。また、シロアリ被害の原因にも。

● 内装の傷み

クロスが剥がれたり、床材が反ったりといったトラブルも起きやすくなります。

見えない場所で家をじわじわ傷めるのが湿気の怖いところ。
だからこそ、高気密住宅では湿気を発生させる暖房器具の使用は避けるべきなんです。

もうひとつの問題|一酸化炭素の危険性

高気密住宅でストーブを使うときのもう一つの大きなリスクが 一酸化炭素(CO) です。

灯油やガスを燃焼させると、酸素を消費して二酸化炭素や一酸化炭素を発生させます。
通常の住宅であれば、隙間風や換気で外に排出されますが、高気密住宅では空気の流れが少ないため、酸素不足や一酸化炭素中毒 のリスクが高まります。

特に、換気が不十分な状態で長時間使用すると、最悪の場合命に関わることも。
そのため、メーカーや施工業者が「石油ストーブは使わないでください」と注意喚起しているんですね。

高気密住宅でも使用できる暖房設備

では、「湿気も出さず、一酸化炭素の心配もない」暖房器具にはどんなものがあるのでしょうか?
代表的なものをいくつか紹介します。

エアコン

今や最もポピュラーな暖房器具。
電気で動作し、燃焼を伴わないため湿気もCOも発生しません。

ただし、寒冷地仕様 のものは高額で、エアコン本体や室外機も大きく重いのが難点。

エアコンをしっかり柱に固定しておかないと、『地震が起こったときに落ちてきた』なんてことを聞くことがあります。
いや、ほんとにめっちゃ重いんですよ!(汗)

また、急速に温める能力は石油ストーブに劣ります。
寒冷地で快適に使用するには予約してあらかじめ部屋を暖めておかないと寒く感じることもあります。

温水ルームヒーター

ボイラーで温めたお湯を循環させて部屋を暖めるタイプ。
お湯の熱を送風によって放出するため空気が汚れません。
また、部屋全体をムラなく暖められるのが魅力です。

しかし、初期費用が高い のがネック。
さらに、富士通ゼネラルやナショナル(現パナソニック)はすでに製造を終了しており、修理時に互換部品がないケースも増えています。

富士通ゼネラルはホットマンというすごい知名度がある製品を製造していたのに製造終了。
ほかのメーカーも終了してしまわないか不安があります。

FF式ファンヒーター

室内で燃焼させた排気を外に直接排出できるタイプ。
湿気や一酸化炭素を屋外に逃がせるため、高気密住宅でも使用可能です。

ただし、壁に排気口を設置するための工事 が必要。
壁に穴をあけるため、見た目や設置場所の制約があり、オフシーズンもそのまま設置しておく必要があります。

オイルヒーター

燃焼を行わないため安全性が高く、空気を汚さないのが魅力。
ただし、電気代が高い のが最大のデメリット。
長時間運転すると月々の光熱費が大幅に上がることもあります。

その他

  • 蓄熱式暖房機
    夜間電力で蓄熱し、蓄えた熱を放出する設備です。近年の夜間電力高騰により、設置というよりは撤去が目立ってきました。撤去費用に補助金が出る場合もあります。
  • ペレットストーブ
    FF式ファンヒーターの灯油じゃなく、木くずなどを固めたペレットを燃焼させて暖房する設備。設置したお客さんの話を聞くと、すごく温かいけどペレット補充がめんどくさいなどの話を聞きます。

まとめ|燃焼式暖房は高気密住宅に不向き

高気密住宅でストーブやヒーターが使えない理由は、「湿気」と「一酸化炭素」。
燃焼式の暖房器具は部屋が良く温まるので快適なようでいて、実は家を傷めたり健康被害を招いたりする危険があります。

せっかく断熱・気密性能の高い住宅を建てても、湿気で内部結露が起きてしまっては意味がありません。
現代の住宅には、燃焼を伴わない暖房設備を上手に組み合わせて、安全で快適な冬を過ごしたいですね。